インディペンデント・アーティストとしての自分を信じること──「Independent Perspectives」Vol.1 音楽プロデューサー・TORIENA
「Independent Perspectives」は、活動歴が長くさまざまな試行錯誤を積み重ねてきたインディペンデント・アーティストをゲストに、これまでの実践や経験をシェアしてもらうシリーズです。まずは2024年10月30日にMIDORI.so SHIBUYAにて、maco maretsさんとTORIENAさんをお呼びしたトークイベントを開催します。お二人が経験してきたことを生で聞き、参加者とのQ&A、ミートアップも実施されます。(詳細はこちら)
さらに、コラム企画もスタート。第一回目となる本記事は、上記イベントにも出演するTORIENAさんが登場。インディペンデントでの活動を展開していく中でどんなことにやりがいを見い出し、何に難しさを感じているのか? 日々、最も大切にしていることは? 欠かせないツールやサービスは? これまで明かされることのなかったリアルなエピソードを、ぜひご覧ください。
TORIENA
Q.インディペンデント・アーティストとしての活動歴を教えてください。
2012年に活動を開始し、作詞、作曲、編曲、ボーカル、アートワークをセルフプロデュースする音楽プロデューサーとして活動してきました。ハードテクノ、gabber、デジタルハードコアなどを織り交ぜたレイヴサウンド、陰影のあるリリックが特徴で、3DCGモデリングも自身で行っています。セルフリリースの他、trekkie trax、Prototypes Records、Explity Musicから楽曲をリリース。また、私立恵比寿中学、ぞん子(ZONe)、beatmania IIDX(KONAMI)、「Team Sonic Racing」(SEGA)、CM楽曲などジャンルを問わず楽曲提供も行なっています。
Q.自身のアーティストとしてのキャリアにおいて、転換点となった楽曲やイベントがあれば教えてください。
転換点となったイベントは2012年の<BLIP FESTIVAL TOKYO>です。音楽をやるために生まれてきたと実感するようなスパークを感じて、またこのようなステージや体験を得たいがために活動し続けています。
音源だと、2020年にリリースしたアルバム『PUREFIRE』は現在の活動の根幹となる作品です。それまでは他人からどう見られるかを気にしすぎていたのですが、この作品から思いっきり自分の好きなことをやるようになりました。
Q.インディペンデントに活動しているからこそ、挑戦できていることやメリットに感じている部分はどこでしょうか?
自由なところだと思います。人が関わると、アーティスト活動する=お金を稼ぐことが前提になってきます。インディでももちろんマネタイズは少なからず必要ですが、メジャーになると関わる人の人数や制作にかかる費用の額が多くなるため、よりお金を稼ぐ必要があります。しかも短期契約の場合が多いと思うので、短い期間で多く音楽で稼ぐとなると多少無理をする必要も出てきます。
ミュージシャンは音楽を作るのが仕事なのに、それ以外でも人の目を惹く要素が必要な場合もあります。昔話ですが、当時私の場合若い女性でしたので、ルックスや言動のことを言われることが多かったです。5kgほど痩せたほうがいいと言われたこともあります。当時それは自分の肌に合わないと判断したので、環境を変えて現在はインディペンデントで活動しています。お金の収支が明瞭かつ自分でコントロールできるところも魅力だし、リリーススケジュールを自分で決めることができるのがいいところです。
Q.インディペンデントに活動していて、難しいと思うことやサポートが必要と感じている部分はどこでしょうか?
告知が一番難しいと感じます。プレスリリースを作成し、ありがたいことに取り上げてくださるメディアや媒体も多数存在しますが、個人の限界を感じる時が多々あります。自分のホームとなる組織があったらいいなと思いますが、人数が増えると不自由も増えそうなので実際に行動には移していません。たまに知り合いに手助けをお願いする時もありますが……。あと、完全な自主企画の音楽イベントやワンマンライブをしたくても、制作案件とライブ活動、事務作業でキャパシティがギリギリになってしまい、結局叶っていません。最近人手不足を感じています、嬉しいことですけどね。
Q.アーティストとしてのキャリアを持続可能にするために、大切にしている/取り組んでいることはありますか?
集合時間や締切などの時間を守るといった、一つひとつの報連相を大事にして丁寧に真剣に取り組むことを大切にしています。インディペンデントは自由な分、自分一人に全部責任がありますし、信頼は積み上げることでしか得られませんから、社会生活上基本的なマナーはしっかり守るよう人一倍心がけています。
私は個人アーティスト活動と楽曲制作案件の2つを生業としていますが、その2つのバランスも大切にしています。制作案件は100%クライアント様の理想を具現化することを目指して取り組んでいます。ヒアリングを大事にしています。その代わり、自分のアーティスト活動では自分のこだわりのみを追求しています。音楽をつくるという活動は同じですが、私の場合内容は全く異なります。その区別が自分のアーティストとしての精神の安定につながりますし、結果的にマネタイズも無理なくできて双方バランスよく活動できているかと思います。そして、自分を信じることはとても大事です。地道な努力は裏切らないと思っています。
Q.インディペンデントに活動する上で欠かせないツールやサービスがありましたら教えてください。
Tunecore、freee、SNS(X,Instagram)、foriioです。Tunecoreはリリースとコラボ楽曲のスプリットや楽曲使用料の回収で利用しています。管理がしやすく、ずっと利用しています。freeeは請求書と見積書の作成、確定申告の時に便利です。SNSは告知やプロモーション、自身の発信に必要不可欠です。foriioは制作案件の実績まとめに役立っています。全て欠かせません。
Q. B-Side Incubator のようなインディペンデント・アーティストの活動をサポートする企業や団体(レーベル、ディストリビューター、メディア、マネジメント、ライブハウス/クラブなども含む)に期待したいことは?
音楽活動をするにあたって、楽曲制作以外のノウハウは業界関係者との繋がりがないとわからないところもたくさんあるので、それをWEB記事などで公開していただけたらいいなと思っています。例えばプレスリリースの書き方や送付時のマナー、報酬交渉の仕方や相場、原盤などの権利関係についてなど。
<プロフィール>
TORIENA
作詞、作曲、編曲、ボーカル、アートワークをセルフプロデュースする音楽プロデューサー。3DCGモデリングも自身で行う。ハードテクノ、gabber、デジタルハードコアなどを織り交ぜたレイヴサウンド、陰影のあるリリックが特徴。セルフリリースの他、トイズファクトリー、trekkie trax、Prototypes Records、Explity Musicから楽曲をリリース。また、私立恵比寿中学、ぞん子(ZONe)、beatmania IIDX(KONAMI)、「Team Sonic Racing」(SEGA)、CM楽曲などジャンルを問わず楽曲提供。
【10月30日開催】インディペンデント・アーティストのリアルな活動に迫るトークイベント「Independent Perspectives」が始動!初回ゲストはmaco maretsとTORIENA
TORIENAさんとmaco maretsさんをお呼びした、「Independent Perspectives」のトークイベントを開催します! トークセッションや参加者とのQ&A、ミートアップを実施。多くのインディペンデント・アーティストからリスペクトを受けるお二人の、これまでの歩みをひも解いていきます。先着40名となりますので応募はお早めに。詳細はこちら。