音楽をやりながら人生を豊かにしていくほうが良い──「ミュージシャン・イン・レジデンス」参加者レポート&音のスケッチ公開
音楽と自然が融合する特別なプログラム「ミュージシャン・イン・レジデンス」に参加した2組から、レポートと音源のスケッチが届きました。
一般社団法人B-Side Incubatorが2024年秋に提供した「ミュージシャン・イン・レジデンス」プログラム。音楽プロデューサーでB-Side Incubatorの理事でもあるstarRoが運営するリトリートハウス「イーグル」(秋田県仙北市・田沢湖)にて、日常から離れた静寂の中で新しいインスピレーションを得ることを目的とした3泊4日に参加したEXPCTRとヒビキから、参加レポートと生み出された音源のスケッチが届きました。
EXPCTR
Q:「イーグル」の環境や設備はどうでしたか?
近隣を気にせずスピーカーから大音量を出せて、気が向いた時にいろんな楽器を適当に弾けて、気が向いた時にソファーやハンモックに横になってぼーっとできる。そういう環境を東京の家でも目指してきたけれど、イーグルはそれを体現してくれていました。DAW設備はもちろん、グランドピアノを含め複数の楽器が揃った制作環境に加え、木造の高い天井、家具、植物、絵、大きな窓から差し込む冬の日差し、かつてライブハウスだった名残の照明やアナログ機材などが部屋を彩っていて、ちょっとした非日常と、どこか祖父母の家を訪ねたような懐かしさが同居しているような場所でした。
イーグルで過ごしていると創作意欲も掻き立てられ、初日からさっそく今回レポートとして提出したスケッチを制作し始めました。「何か作らないと」というプレッシャーからではなく、能動的でリラックスした状態で制作する時間はとても有意義でした。
日没後、調達した食材をみんなで料理するときに始まる“練習”という名の乾杯がとても印象に残っています。“飲み会”の序盤のことを秋田では“練習”というらしく、酒好きの自分を許容し肯定してくれるような響きが気に入っています。おかげで何十本のビールが空いたか分かりません。今後も東京で活用していこうと思います。
Q: 田沢湖の自然はどうでしたか?
田沢湖に滞在中、何度も訪れました。紅葉真っ盛りの山々に囲まれた広大な湖が静かに揺らぐ光景は、単純に見られてよかったです。今回の滞在がなければ、おそらく見ることがなかったかもしれない景色でした。
3日目の午前、starRoさんに滝行へ連れて行ってもらいました。
雪解け水が全身に叩きつけるように落ちてくるあの激しい“冷たさ”と、滝から出た後に信じられないくらい震える身体、そして内側から湧き上がる研ぎ澄まされた感覚が今も忘れられません。いい経験でした。
イーグルに戻った後、湧いてきたギターのフレーズがすごく綺麗で、受け入れ担当者のひとりのメイさんにお願いしてフルートで吹いてもらいました。今回提出したスケッチは、その音色をベースに作ったものです。自分で聞き返すと滞在中の空気感を思い出すことができます。
Q:starRoからの言葉で印象に残っていることはありますか。
“地元というベースを持ち、地に足を付け生活のことなど総合的に考えながら、次の展望に向けて音楽を続けられている。それはこのプログラムやB-Side Incubatorを通じてアーティストたちに伝えたい生き方だ”と言ってくれたのを覚えています。自分の音楽を続けるための生き方が受け入れてもらえたのは正直嬉しかったし、今後もそれで良いのだと思うことができました。
Q:今回のプログラムを経て、自身の音楽への向かい方になにか変化は起きましたか
音楽を作るのに東京も地方も関係はなく、どういう生き方をしながら創作を続けたいかによって自由に選択できるものなんだと考えられるようになりました。
今は東京という環境が好きで住んでいるけど、居場所やライフスタイルを限定し固執し続けないよう柔軟な姿勢でいたいと思っています。
Q:プログラム全体の感想を教えてください
今回のプログラムに応募したのは、日常のタスクから切り離して、純粋に音楽に向き合える時間を過ごしたいと思ったからでした。面接を通して、その思いを汲み、選んでくれたstarRoさんを含めたB-Side Incubatorの方々に感謝します。3泊4日の滞在中、自分なりにやれることをやり、取り入れられるものを取り入れ、感じられるものを感じられました。日常から切り離し、内面や音楽に向き合えるあの時間を、より多くのミュージシャンにも体験してもらえるよう、このプログラムは継続してほしいと思います。
音のスケッチ
プロフィール
作詞、作曲、編曲、パフォーマンス、MVやアートワークなど自身で手がける福岡県出身のSSW / プロデューサー。2018年以降、インディペンデントに活動を続けながらコンスタントに楽曲を発表。キャッチーながら一癖あるサウンドをポップスに落とし込んだトラックメイキングを得意とする。これまで4作のEPをリリース。そのほか、Maika Loubtéのリミックスアルバムに参加、他アーティストへの楽曲プロデュースなども行う。
ヒビキ
2019年にスウェーデンのRecord Unionが発表したデータによると、インディペンデントアーティストの73%が鬱や不安障害に悩んだ経験があるそうです。
楽曲制作やプロモーション、資金調達、SNSの運用。
常に頭がパンク寸前な私たちインディペンデントアーティストの生活は、息をつく暇もありません。
今回はそんな忙しい日々から離れ、自分の感情や音楽とじっくり向き合うことを目的としてリトリートプログラムに参加しました。
滞在先であるイーグルは、制作スタジオとしての機材が整っているだけでなく、天井が高く開放的で、リラックスできる空間です。
そこにいるだけで自然と肩の力が抜け、心や身体が落ち着く感覚を得ることができました。
そして、プログラムの中で特に印象に残っているのは、音楽とは無関係だと考えていた絵を描いたことです。
正直なところ、絵を描くことは幼少期から苦手だったのであまり関心がなく、音楽とは直接関係のないことにどれだけの意味があるのか疑問でしたが、完成した絵を通して考えたことや感じたことを話し合う時間は、表現を通じて自己や他者を理解しようとする行為の大切さを実感するものでした。
新たな挑戦を楽しむことで、自分自身の創作を見直す良いきっかけとなりました。
また、田沢湖の自然豊かな景色の中で過ごす時間は、普段の生活では見過ごしていたような繊細な心の動きに気付く機会にもなりました。
朝の穏やかな空気と、夜に感じた東北の厳しい冬の暗さはどちらも美しく、都会の生活では感じることができないエネルギーがありました。
starRoさんとの会話で特に印象的だったのは、「音楽をやっている人は、音楽をやりながら人生を豊かにしていく方が良い」という言葉です。
この言葉は、思ったような反応が得られず、楽曲制作そのものが億劫に感じられる時期が長く続いていた私にとって、今後の指針になるものです。
必要以上に焦らず、自分のペースを見つめ直すことを決心しました。
3泊4日という時間をリトリートに費やすことで得た経験は、これからの音楽制作に新たな視点を与えてくれたと感じています。
必要以上に焦らず、自分のペースを見つめ直すことを決心しました。
3泊4日という時間をリトリートに費やすことによって得た時間や経験は、これからの音楽制作に新たな視点を与えてくれたと感じています。
音のスケッチ
https://on.soundcloud.com/WHnD6XGEWUc7f6b3A
プロフィール
京都府出身のラッパー。緻密で感情表現が多彩な歌詞や、歌とラップをシームレスにフロウするスキルフルなスタイルに定評がある。リリース作品においてはビートメイクやミキシング、そしてアートワークの制作も自ら手掛けることが多く、作品のイメージや世界観を深く表現することを大切にしている。
クラウドファンディング開始!
ミュージシャンの活動に役立つ実践ガイドを作ります!法律・契約、資金調達、プロモーション、メンタルヘルス…など、音楽活動を進めていくにあたって必要な知識・知見を網羅したナレッジ集がいま必要とされています。
音楽業界に関連する方々全員にとって役立つバイブルを目指したい。ぜひ皆さまの力を貸してください。
詳細は【こちら】から










