「インディペンデント」とは、多様な選択肢と変化を恐れない精神性── 。音楽プロデューサー・starRoが語る、「ミュージシャン・イン・レジデンス」への思い
秋田県仙北市に移住し、地域おこし協力隊としても活動してstarRoが立ち上げたアーティスト・イン・レジデンス事業と連携し、一般社団法人B-Side Incubatorでは3泊4日の「ミュージシャン・イン・レジデンス」プログラムを始めます。(2名まで参加費を当法人が補助、参加締切は9/30)starRoがなぜ、このプログラムをはじめたのか改めてその思いを語りました。
B-Side Incubatorの理事である音楽プロデューサーのstarRoは現在、秋田県仙北市に移住し、地域おこし協力隊としても活動しています。地域活性化活動と音楽活動は切り離せるものではなく、starRoの音楽やクリエイションそれ自体が仙北市の可能性を広げています。
そんなstarRoが立ち上げた、仙北市でのアーティスト・イン・レジデンス事業と連携し、一般社団法人B-Side Incubatorでは3泊4日の「ミュージシャン・イン・レジデンス」プログラムを始めます。(2名まで参加費を当法人が補助、参加締切は9/30。詳細はこちら)starRoがなぜ、このプログラムをはじめたのか改めてその思いを語りました。
劇的に変化してきた音楽との関わり方
秋田県仙北市、田沢湖にある田沢湖リトリート「イーグル」。元々はライブハウスだったこの施設に私が所有する機材などを運び入れてアーティストの創作の場に改築しました。この物件との出会いは、とても運命的だったと感じます。
この地域は日本百景にも選ばれる観光地でありながら、驚くほど豊かな自然の中で人々が暮らしています。日本一の水深を誇る田沢湖、古くから人々を癒してきた温泉、自然の力を食す発酵食文化。普段は都会で活動するミュージシャンにこそ、今回のプロジェクトを体験してほしいと思っています。環境を変え、自然とのつながりを取り戻すことことで得られるインスピレーションは、自身の音楽活動の捉え直しにつながっていくはずです。
このような活動の背景には、これまでの私のミュージシャン人生の変化の大きさが影響しています。6歳で音楽をはじめて今に至るまでこの40年余り、大半は、宅録ミュージシャンとして音楽を作り続けていました。学生や会社員として働き、音楽活動は趣味の範囲を出ませんでした。その間、5年間ほどは、アーティストのマネージャーやツアーマネージャー、音楽関連のスタートアップなど裏方として音楽業界に関わっていた時期もあります。
プロの音楽家として活動するようになったのは30代後半に差し掛かった頃。当時はじまったばかりだったSoundCloudを通じて自分の音楽が広まったのをきっかけに、約10年にわたりロサンゼルスを拠点に音楽プロデュースやリミックスを仕事として手掛けました。そして、2016年にはグラミー賞リミックス部門にノミネートされるという栄誉も得ました。私の音楽活動は世界的な規模に広がり、子どもの頃に描いていた夢が現実のものとなりました。
グラミー賞の会場にて、友人のスティーブ・アオキと
しかし、忙しい音楽活動で心身のバランスを崩し、幼い頃から持っていた純粋な音楽への愛を見失ってしまいました。同じペースで活動を続けることが困難になり、13年間住んだアメリカから日本に帰国し、音楽活動を休止。メンタルヘルスの問題に向き合うことを選びました。
帰国後、『WIRED』日本版からの寄稿依頼を受け「インディペンデント・アーティストの音楽活動と経済活動の交差点」をテーマに連載を開始しました。その後、コロナ禍中のインディーズアーティストを支援する目的で「Sustaim」を立ち上げたり、若いアーティストのメンターシップをしたり、自分自身の音楽活動よりもアーティスト支援に重点を置くようになりました。
現在では、これまでの経験を生かして地域おこし協力隊として村づくりや地方創生に携わっており、その一環として、秋田県の田沢湖でリトリートやアーティスト・イン・レジデンスを提供する施設運営をしています。自分の作品をリリースしたり、外部に向けて音楽表現をする機会はほとんどなくなりましたが、自分のために音楽を作り続け、音楽との深い繋がりは今も続いています。
地域おこし協力隊の活動の一環として、地域の温泉施設を会場にしたアンビエントミュージックライブを実施。観客は地域の人々で、その多くは高齢者だった。
変化に対する心身の柔軟性を身につける
私の音楽活動や音楽への関わり方の変化は、社会の変化に強く影響されています。なぜなら、インディペンデント・アーティストとして活動を続けるには、音楽制作と経済活動、そして心のバランスを柔軟に調整し続けることが求めらるからです。
音楽を続けるために経済活動が必要ですが、その活動が音楽を通じて行われる場合、流通形態やマネタイズの方法がその時々の社会のあり方やサービスのカタチに規定されてしまいます。そのため、音楽アーティストとしてのアイデンティティが、自分の表現したいものと社会に受け入れられるものとの間で揺れ動いてる人も多いと察します。
「インディペンデント (independent)の対義語は「依存」あるいは「従属」を意味する「ディペンデント(dependent)」です。音楽活動におけるディペンデントとは、何か固定された活動環境やアプローチに依存している状態を意味します。逆に言えば、インディペンデント・アーティストとは、何かひとつのアプローチに縛られすぎず、その時の環境や自分の状態に合わせて音楽との関係性を、まるで波乗りのようにナビゲートしていける人あるいは精神性のことを言うのだと思います。
私たちB-Side Incubatorは、そのようなインディペンデント・アーティストであり続けるために必要な知識や心構えなどを様々な角度から提供し、できるだけ多くのアーティストが健全に音楽を続けられるための道を自分自身で見つけられるような支援をしたいと思っています。そして提供するコンテンツの内容には、現時点での音楽マーケットに適した様々な具体的ノウハウの情報提供もあれば、音楽活動を続けるためのライフスタイルデザインや、環境変化を受け入れて対応するための精神的対処法など、アーティストとしての生き方という根源的なテーマも含まれていきます。
どのテーマやコンテンツも等しく重要なものですが、各々のアーティストが置かれている状況によってその取り込み方や実戦への落とし込み方は変わってくるはずです。
B-side Incubatorを通して、アーティストのみなさんが活動形態にできるだけ沢山の選択肢をもち、自分なりのアプローチで変化の波に乗り続けるサーファーであり続けるためのきっかけをつくっていただくことを願っています。
インディペンデントに活動する音楽アーティストを支援する一般社団法人B-Side Incubatorでは、団体の理事を務める音楽プロデューサー・starRoが運営するリトリートハウスと連携し、「ミュージシャン・イン・レジデンス」の提供を開始します。
現在、starRoは秋田県仙北市にて田沢湖リトリート「イーグル」を運営しています。この度、同施設に滞在し、音楽との関係を捉え直すための3泊4日のプログラムを提供します。
本プログラムでは、田沢湖エリアと継続的に関わっていくことを目標に、単なる滞在にとどまらない地域との交流も含めたさまざまなアクティビティが体験可能です。また、starRoによる楽曲のプロデュース機会を手にできます(プロデュース費用は本プログラムの助成には含まれません)。みなさまのご応募を心からお待ちしております。
お申し込み・詳細は募集要項をご確認ください。
現在starRoは、田沢湖リトリート「イーグル」で展開していくアーティスト・イン・レジデンスやリトリート事業の予算捻出のための「ふるさと納税」にもチャレンジしています。御礼の品は地域の食文化に関わるものや温泉旅館・ホテルの宿泊券、工芸品などさまざま。ぜひご協力ください。詳細は「秋田県田沢湖の自然・里山体験で日本を元気にするプロジェクト」をご覧ください。
starRo
横浜市出身、秋田県仙北市を拠点に活動する音楽プロデューサー。 2013年、ビートシーンを代表するレーベル「Soulection」に所属し、オリジナル楽曲から、フランク・オーシャンやリアーナなどのリミックスワーク、アーティストへの楽曲提供なども行なう。16年に1stフルアルバム『Monday』をリリースし、The Silver Lake Chorus「Heavy Star Movin’」のリミックスがグラミー賞のベスト・リミックス・レコーディング部門にノミネートされるなど、オルタナティブR&B、フューチャーソウルなどのシーンを中心に注目を集める。音楽活動の傍ら、自身の活動経験、海外経験を活かし、インディーズ支援団体「SustAim」を立ち上げ、執筆やワークショップを通して日本のインディペンデント・アーティストの活性化のための活動にも従事。23年には、秋田県仙北市の地域おこし協力隊に任命される。リトリートや音楽を軸に仙北市の魅力を伝え、同時に仙北市に住む人びとと深く関わるようなプロジェクトを展開。そうした一連の活動を通じて、社会におけるアーティストの役割や持続的な活動スタイルを探求する。一般社団法人B-Side Incubator理事。







